ジュゼッペ・ヴェルディがオペラ界のシェイクスピアだということを証明する作品をひとつ選ぶとすれば、それはこの「リゴレット」でしょう。
ヴィクトル・ユーゴーの「王は愉しむ」をもとに、風雲児ヴェルディは、リゴレットという画期的な一人の人物を作りだしました。リゴレットは、好色なマントヴァ公爵に道化師として仕え、雇い主の餌食となる女性を卑劣にも嘲笑っています。けれども、それと同時に、世の中の悪から娘ジルダを守ろうとする、愛すべき父親としての姿も描かれています。
マントヴァ公爵が娘ジルダに目をつけるたときから、リゴレットの気分は晴れません。恋する相手の本当の姿を娘にはっきりと見せようとしますが、娘はとてもナイーブ。公爵の真の姿が見えません。リゴレットは、公爵暗殺のためスパラフチーレを雇いましたが、それは間接的にジルダを殺してしまうことになるのでした。
「リゴレット」は、1851年3月11日、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で初演されました。この作品は、悲劇で最高潮に達するブラックコメディ、堕落と好色さが、優しさや純真さと出会う瞬間など、偉大なドラマを構成する全ての要素を備えています。
ストーリーの展開もさることながら、「リゴレット」の音楽は、まさにヴェルディならでは。メロディーが奏でられる度に、さらに美しい世界へと皆さまにお連れします。
ウィーン国立歌劇場で、この素晴らしいオペラが上演されるには、多くの理由があります。もしどうしても一つにしぼらなければならないとすれば、この歌劇場で「女は気まぐれ La donna è mobile」を聞き、マントヴァ公爵が登場するのを見るということでしょうか。どうぞお見逃しなく。
リゴレット、G.ヴェルディ
Vienna State Opera
© Julius Silver