「ラインの黄金」は、リヒャルト・ワーグナーの舞台祝祭劇「ニーベルングの指環」の序夜に当たる作品です。この祝祭劇「指環」は4部作ですが、スケールも、そこに秘められた野心も一つとして同じものはありません。ドイツの叙事詩「ニーベルングの歌」にインスピレーションを受け、全世界に影響力を及ぼそうとする神々の弱点が、あまりにも人間的なあやまちによって消されてしまうというストーリーです。ミュンヘンの宮廷歌劇場で、1869年9月22日に初演され、この作品から、長い物語が始まります。
権力欲の強いニーベルング族の小人アルベリヒは、ラインの黄金を盗みます。この罪のため、彼は生涯愛というものを知らずにいる運命にあります。巨人のファフナーとファゾルトは、黄金の要塞ヴァルハラを建設するための算段をしています。神を不死に保つ力を持つフライラが、その努力に対する褒賞としてファフナーとファゾルトに与えらますが、そのため、神々は若さを失って行きます。彼らのリーダー、ヴォータンは、代わりの解決策を考える必要に迫られ、巨人がアルベリヒの黄金を受け取ることを提案します。
小人のアルベリヒは、自分の宝物殿に加えるため、自分の民を奴隷にして、貴金属を掘り続けます。魔術を学んだヴォータンは、アルベリヒが金から鋳造した指輪を自分のものにしたいと思っています。ヴォータンが指輪を手に入れたとき、アルベリヒは持ち主となる人全てに、死がもたらされるよう呪いをかけます。地の女神エルダが現れたとき、アルベリヒのその呪いはさらに強いものとなり、ヴォータンは、指輪を持ったままでいるか、巨人に返すか決めなくてはならなくなります。
今回、ウィーン国立歌劇場で公演されるこの「ラインの黄金」では、ワーグナーが原作のドラマに心酔していたことがよく表されています。ワーグナーはよく冗談で、自分のモティーフやメロディーは、空中から湧き出て彼のところにやってくるのでコントロールできないと言っていました。それが真実であるにしろ、ないにしろ、ワーグナーの表現は、この音楽のこの世のものとは思えぬ美しさをみごとに表現しています。
ラインの黄金、 R.ワーグナー

Vienna State Opera
© Julius Silver